廃都、忘れられた住人たち
蜘蛛のいた部屋の南と西には扉があります。
アングリフ「さて、ブープーよ。どっちに進めばいいのだ?」
ブープー「こっち!いやちがう、こっち!うーん。おら、どっちでもいい!」
アングリフ「……。」
トビン「……はいはい。調べるね。」
トビンは〈捜索〉を一通り済ませ、両方の扉に問題がないことを確かめます。まずは南側の扉を開けてみたところ、かつて兵舎だったような雰囲気の部屋で、中を〈視認〉した限りでは、生き物のいる形跡はありません。
続いて西側の扉を開けてみましたが、そちらは回廊が先に続いており、その途中に扉が見えます。
トビン「ちょっと見てくるね。」
まずは、トビンが通路の途中の扉まで〈忍び足〉をして近づき、その扉に〈聞き耳〉を行ないました。何か金属を叩く音が聞こえてきます。
トビン「……!……!」(何か聞こえると見ぶり手ぶりで訴える之図)
ヴィヌク「よし、行ってみよう。」
ガシャガシャ鎧の派手な音を立てて、トビンの元へ行くパーティたち。
トビン「はぁ。駄目元でも〈忍び足〉のロールだけはしてみようよ……。orz」
アングリフ「では、開けるぞ!」
そこは、先ほどの蜘蛛の部屋と同じく、上下が逆さまになっている部屋のようで、天井から備え付けの木製のテーブルがぶら下がっており、床には、調理道具が部屋中に散らばっています。
そして部屋の中には、コックのような格好の淡い人影が3人、天井に立って、まるでそれが当然のように慌しく調理しています。
扉の前で、ポカーンと見ているパーティたち。
DM「〈知識:歴史〉でチェックを。」
ラド「じゃぁ、私が。コロコロ……、達成値26でどう?」
ラドの分析:
・コックたちの身なりから〈大変動〉以前にザク・ツァロスで働いていた人々の様
DM「で、彼らは、前回君たちが戦った幽霊たちと同じような感じがするよ。」
PL「うはっw」
パーティたちは振り返り、ゴールドムーンをじっと見つめます。だが、ゴールドムーンは、全く興味がなさそうで、彼女はじっとリヴァーウィンドの方を見ています……。
PL「……。完全無視ですか。orz」
トビン「では、我々の様子に気付いて、襲ってくる気配とかは?」
DM「それはないです。」
トビン「──先に進みますか。」
通路を先に進むと、少し広い部屋に出ました。部屋には壊れたテーブルや椅子、瓦礫が散乱しており、西側の閉め切った鎧戸の窓からは、水が染み出してきて、部屋の真ん中に水溜りができています。
フリン「まったく……酷い有様じゃな。逆さまになった部屋の次は、水洩れの部屋か。どうやら地上の湿地帯の水がここまで流れ込んでおるようゃの。」
ブープー「あっち。あそこ入る。」
彼女の指す方を見ると、南の壁に大きな暖炉が備え付けられており、部屋に溜まった水が、その中に流れ込んでいます。彼女が言うにはその暖炉の中に入るようです。
暖炉に近づいてみると、暖炉の奥の壁に、人が出入りできそうな水の溜った穴が空いています。水深は足元程度でそんなに深くは無さそうです。
アングリフ「ブープー、暖炉の奥に何が待っているのだ?」
ブープー「行ったら、わかる! あんたうるさい。さっさとくる!あんた、もしかしてこわい?」
髭をプルプルと震わせるアングリフ。
ブープー「おら、さきにいく。」
そう言って、彼女は暖炉の奥に入って行きました。暖炉の奥は自然の洞穴のような通路がずっと続いているようです。
アングリフ「うぬぬ……。あのどぶドワーフに行くことができて、ソラムニアの騎士に行くことができないことなぞないわ!」
トビン「もう行くの?北に部屋があるようだけど、そっちも見てみない?ちょっと行って〈聞き耳〉してくるよ!」
アングリフ「ダメだ!さっさと暖炉の中に入るぞ!」
トビン「せ、せっかく来たんだから、もっと見ていこうよ〜。」
やり場の無い怒りにかられたアングリフに首根っこを捕まれて、無理やり暖炉の方に引きずられていく不幸なトビンなのでした。
膝下まで水に浸かる洞窟を暫く進むと、先が明るくなってきました。洞窟はすぐ先で通路になっており、明かりはその通路の途中の部屋から漏れています。
先に進んでいたブープーは、その明かりが漏れている部屋に入っていきました。続いてパーティたちが部屋に入ります。
部屋には、小麦粉らしき粉が詰まっている大袋の山が積んであり、奥には、パン焼き釜などが見え、天井には固定された絶えない光を放つトーチが設置されています。
部屋の隅の方では、ブープーがムシャムシャと何かを食べているようです。
トビン「ブープー、君は何を食べているんだい?」
ブープー「あんたもたべる?」
トビン「……ごめん、遠慮しとくよ。」
ネズミの尻尾を口から出しながら答えるプープー。
トビンが部屋を〈捜索〉しましたが、特に目ぼしいものは見つからず。ただ天井を見ると、先ほどの巨大蜘蛛の部屋にあったような穴がありました。どうやら、あの粘液だらけの下水道はこっちにも続いてるようです。
トビン「そういえば、下水道の途中に横道があったような…。」
ブープー「じゃぁさきにすすむ。こっち。」
いつの間にか食事を終えたブープー。その汚れた服に手を擦りつけると、何もなかったように入ってきた通路に戻り、先へ進みだすのでした。
トビン「どぶドワーフってマイペースだな……。」
ブープーを追いかけ、パーティたちは再び通路を進みます。通路に並んでいる建物はボロボロになっていて崩れかけています。
トビン「じゃぁちょっと通り過ぎざまに、側の建物の扉を開けて覗いてみるよ。」
トビンが覗いた部屋は、図書館なのでしょうか、壁に沿って本棚の並んだ部屋で、薄暗く埃っぽくて、古くてカビ臭い紙の臭いがこの部屋を満たしています。部屋の奥には金色の王座があり、そこに学者の格好をした気味の悪い初老の人物が座って、何か本を読んでいました。
アングリフ「トビン、何をしてるのだ?」
トビン「いや、人がいるよ?本を読んでいるみたいだけど……。暗い所で本を読むと目が悪く…」
アングリフ「何!?」
慌てて覗いてみるパーティたちでしたが、見ると、前回のミシャカルの神官っぽい亡霊が本を読んでいます。
そのとき、幽霊の方がパーティに気づいたようで、
亡霊「おお!そこにいるのは誰でしょうか?」
アングリフ「私は冠騎士団のアングリフと同ヴィヌク、そしてその仲間達です。見たところ、貴方はミシャカルの司祭とお見受け致しますが……。」
亡霊「私の名はオサミス、私はここを訪れる者たちを長い間待っていたのです。どうか私の願いを聞いて頂けますか?」
アングリフ「なんでしょうか?」
亡霊「私は人から一度の質問に答えるまで、魂になってもここに残るという誓いに束縛されているのです。」
亡霊「私はこのザク・ツァロスについて多くのことを知っていますので、貴方たちのお役に立てるかもしれません。」
一応、ゴールドムーンの方を見てみます。しかし彼女は、今は美しい金と銀の髪の毛にくしを通すことに注意を注いでおり、亡霊には全く興味なさそうにしています。
PL「ダメだこりゃw」
PL「いくらこのセッションでNPC扱いだからって、小説と性格変わりすぎてないかw」
──数分のパーティ会議の末、決まった質問は、
パーティ『ここに住まうドラゴンの脅威から対処する方法を教えてくれ!』
すると亡霊は語りだしました。
亡霊「この先を進むとあなた方は滝を見つけるでしょう。そこに生えているツルを使って、用心しながら下に降りてください。滝を降り、あなた方は大きなホールへ続く通路を進み、さらにその先の踊り場の奥の通路に入ってください。やがて、あなた方は〈ミシャカルの円盤〉を見つけることができますが、あなた方はそれのために戦わなければならないことを知るでしょう……。」
PL「ちょっとまて!質問の答えになってないぞ!」
DM「質問に答えると、『ありがとう、これで私の魂は開放されます……。』という言葉を残して、彼はすっと消えてしまいました。」
PL「なんて強引な。」
PL「これじゃドラクエの街の人だよw」
とりあえず消え去った亡霊のいた部屋に入って〈捜索〉をしたところ、様々な本が本棚に並んでいることがわかりました。背表紙をチェックしたところ、
・ヒューマ・ドラゴンベインの生と死
・エルゴスの種族
・キス=カナン年代記の写本
などの他、貴重な書物がいくつか見つかりました。
ラド「おお、すばらしい!これは非常に価値がある本だぞ!」
トビン「そうなの?じゃぁ持って帰ろうよ。」
しかし、トビンたちが手に入れようと本に触れた途端、あまりにも古くて腐っていたのか、全ての本がボロボロに崩れてしまいました。
トビン「やっちゃった?」
ラド「まぁ、こんなことだろうと思ったけど……。」
廃都の深層へ
通路を先に進むと、小さな広場に出ました。通りの建物は天井の岩石によって押しつぶされて歪んでしまっています。広場には、我々の行く手を遮るように地下に流れ込んだ水が川となって流れています。
ブープー「このかわ、わたる。」
彼女はそういうと、かなりの水流のありそうな川の中に入って行き、何度か流されそうになりながらも、何とか渡り終えました。
DM「えー、先に言っておきますが、川を渡るには【筋力】の修正値でチェックしてもらいます。」
トビン「ラドの修正値いくつだっけ?」
ラド「【筋力】4なので-3……。orz」
フリン「やれやれ。世話がかかる魔法使い様じゃ。安心せい、ワシがおぶって渡ってやる。」
そんなことを言っているうちに、リヴァーウィンドが顔を赤らめるゴールドムーンをお姫様抱っこして、先に渡ってしまいました。
トビン「……。」
アングリフ「よ、よし、流されないように我々は各人をロープで縛って渡るぞ。」
DM「では、難易度15で【筋力】の修正値を加えた判定をしてください。」
一人一人と、強い水流の川を慎重に渡るパーティたちでしたが、ここで、フリンがまさかの
出目4を出して失敗…。しかし、問題はそこではなかったのです。
ロープのおかげで流されたフリンは無事救出されましたが……。
ラド「──ところで、上の私は?」
DM「ええっと、フリンが滑った拍子に投げ出されますね。」
ラド「そんなーぁ!」
フリン「す、すまぬ……。」
DM「では、判定を。」
ラド「ええいっ!コロコロ……、よしっ!出目20!」
一同「おぉー!」
水の中に投げ出されたラドは、奇跡的に踏ん張って向こう岸にたどり着くことができました!
プープー「あんたたちおそい。そういえば、ここほうもつこ。」
と、隣の建物を指しますが、入り口の扉の前は川でふさがれており、入るには、再度川の中に入らなければならないようです。が、判定ロールにウンザリしているパーティたち。
ラド「もう勘弁してくれ…。」
アングリフ「うむ。先を急がねばな。」
トビン「じゃぁボクがちょっと行ってきて見てくるよ。ロープの方はお願いね!コロコロ……、出目5。あれぇ?」
トビンは足を滑らせて水に流されそうになりますが、ロープのおかげで助かったので、懲りずに再度挑戦です。ここで諦めれば、ケンダーの名が廃ります。
トビン「はぁはぁ。では再度、コロコロ……出目18で成功。で、扉を〈聞き耳〉と〈捜索〉して何もなければ開けます。」
トビンがそっと扉を開けます。中には崩れかけた長い大理石のテーブルがあり、床は埃だらけです。そして、槍を持った亡霊のような気味の悪い人影が4人部屋の隅に立っており、トビンの方に顔を向けると、目を赤く光らせてゆっくりと迫ってきました!
アングリフ「何かいたか〜?」
トビン「おじゃましました〜!」(ピシャリ!)
急いで扉を閉めて、パーティの方に戻っていくトビン。彼らは建物の外には出ないようです。
トビン「いやぁ、また人がいたけど」
ヴィヌク「亡霊?」
トビン「なんだか機嫌が悪いみたいだったから戻ってきた……。」
アングリフ「もういい、先にいこう。」
ザク・ツァロス深層、バルプ大王ファッジ一世
さて、通路は先で崩れて崖になってしまっており、川の水が滝のようになって、流れ落ちています。
ブープー「ここ、おりる。」
彼女の言葉に、崖下を覗くパーティたち。崖下には薄い霧に覆われており、はっきりとはわかりませんが、500フィート以上はあり、ザク・ツァロスの廃都の中心部がうっすらと見え、ドラゴニアンに使役しているどぶドワーフが働いている姿が確認できます。
トビン「亡霊が言うにはツルを使えということらしいけど…。あ、あれかな?」
古い時代の植物のツルが、滝の側面の壁の一面に生い茂っており、滝の湿気でつるつるとしておりますが、そこそこ丈夫そうで、これを使って降りることはできそうです。
DM「はい、そのツルを蔦って崖下に降りることができます。先に言っておくと、DC10の〈登攀〉判定をしてもらいます。本来何度もチェックしますが、今回は2回に簡略化で。失敗して落ちると、1回目は20d6、2回目は10d6のダメージを受けてます。」
PL「平均、35〜70ダメージか。十分死ねるな。」
ラド「無理なので、フェザーフォールの呪文を使います。」
トビン「いいなぁ〜。あ、それってみんなに効果ある?」
ラド「たぶん、8人まで大丈夫だと思う。」
トビン「やったー!」
さて、パーティは無事に崖の下に降りることができ、さらに通路を進んでいます。ブープーは通路の途中の扉を開けると、そのまま部屋に入っていきます。そのとき通路の先から、何者かが話す声が聞こえてきました。
フリン「なにを言ってるのだ?」
DM「共通語やドワーフ語、どぶドワーフ語でもなさそうです。」
ラド「竜語?それならわかるけど。」
DM「はい、そうです。」
謎の声「侵入者がここに来ているようだな。早く捕まえるのだ。」
謎の声「はっ!わかりました!」
謎の声「わらわは非常にイライラしておる。速やかに探し出して捕まえるのだ。」
トビン「この通路の先から聞こえてるの?」
DM「ええ、途中にブープーの入っていた扉があります。」
トビン「じゃぁとりあえず、そこまで〈忍び足〉で……コロコロ、達成値21。」
DM「はい、無事に部屋に入れたようです。」
アングリフ「では、我々も行くぞ!コロコロ……。」
──結局、トビン以外〈忍び足〉に成功したものはいませんでした。
謎の声「今日はやけに騒がしいが気のせいか?よし、お前見て来い!」
謎の声「はっ!」
声の主がこちらに近づいているようですが、暫くすると、何も見つけられなかったのか、戻っていきました。
ヴィヌク「なんだかわからないが助かったな。」
ブープー「バルプ大王、もうすぐ。こっち。」
トビン「あれ?向こうにも扉があるけど……行ってみるね。」
アングリフ「お、おい!」
トビンが扉を開けた先には、ドラコニアンが数匹、武器を構えて立っていました。ここで戦闘ラウンド開始です。
ラド「ここで騒がれるとまずいな。」
ラドはウェブの呪文を唱えて、扉の向こうの部屋のドラコニアンたちを、出現した蜘蛛の糸で絡めて動けなくします。何匹か反応セーヴに成功して絡めきれなかった者もいるようですが十分です。
続くフリンは得意の弓でドラコニアンを速射。前方のドラコニアンの体に、彼の放った矢が刺さります。
ひるむドラコニアンに、今度はトビンがフーパックからブリッドを飛ばして攻撃し、ダメージを負わせます。
ヴィヌクもメイスでそのドラコニアンに殴りかかり、命中。渾身の一撃がドラコニアンの頭を砕きます。絶命したドラコニアンは、石化しながら地面に倒れると、倒れた衝撃でバラバラに崩れてしまいます。
アングリフの方も、ランスを振り回して次々とドラコニアンを攻撃します。
数ラウンド後には、ドラコニアンたちを全て片付けていました。
ブープー「あんたたち、ようはすんだか?」
トビン「うーん。それが我らが騎士様が若干手間取ってるみたい。」
一同「またかよ!」
後ろでは、石化したドラコニアンに深く刺さってしまった大事なランスを必死に抜こうとするアングリフの姿がありました。
[ドラコニアンからの戦利品]
・ロングソード×5
・チェインシャツ×5
ブープー「このさき、おうさまいる。あんたたち、あえる。」
パーティたちは、"ひみつのとびら"だという扉に、彼女に続いて入ります。
その部屋は、ホールのように広くなっていて、金色の布が壁を飾っていました。あらゆる色の絨毯がパッチワークのように床に敷かれており、部屋の奥には、金箔で飾られた巨大な王座があり、そこに、サイズ違いの大きな王冠をしたローブを着た小さな男が、数人の小さい兵士を従えて座っています。
バルプ大王「きさまたちは、なにものだ??」
彼の側によって何かを話すブープー。
バルプ大王「なるほど。われはバルプだいおう、ふぁっじ、いっせい。いちぞくのおう、とてもえらい。このものから、はなしをきいた。くろいどらごん、われわれにめいれいする。どらごん、いなくなれば、われわれじゆうになる。おまえたち、どらごん、たおす?」
トビン「いや僕らはプラチナの円盤を探しにきたんだけど…。君達見なかった?」
バルプ大王「えんばん、どらごんのたから。えんばん、なくなる、どらごん、おこる、われわれ、きけん。」
フリン「何だかうさんくさいわい、わしは信用できん。」
ヴィヌク「いや、うまいこと仲間にできれば、こんな奴らでも戦力になるかもしれん……。」
ヴィヌク「大王、我々と共にドラゴンと戦うのはどうだろう?」
バルプ大王「それはだめ。われわれのだいじなやくめ、ここをまもる。おまえたち、どらごん、たおす。」
アングリフ「よしわかった。我々でドラゴンを倒そうじゃないか。」
バルプ大王「それはたすかる。ほうびに、どらごんのざいほう、おまえたちにやる。バルプ、とてもかんだい。バルプ、とてもえらい。」
アングリフ「どうする、すぐに行くか?」
トビン「それでもいいけど、奇襲できないかな。」
ラド「私は限界。夜まで休んでからにしたい。」
バルプ大王「どらごん、よるは、ときどきねてる。」
トビン「それはいいね。」
アングリフ「では大王、すまんが準備をしたいので、ここで休ませてほしい。」
バルプ「わかった。へや、よういする。よるまでそこでやすむ。」
パーティはバルプ大王が用意した部屋で寝ることにしました。
NPCのゴールドムーンの持つ杖の唯一の癒しの力も、戦闘中には使えないだろうということで、杖のチャージ数を消費して傷ついてる者のHPや、ラドが受けた毒による【筋力】へのダメージを、ここで完全に回復します。杖の青水晶の放つ光は、どんどん鈍くなっていきます。
黒竜キサンスとの決戦
──そして真夜中。
彼らは、図書館の亡霊に教えられた道を通って、ドラゴンがねぐらにしているという、ホールへの長い通路の入口に立っていました。(出発するときにもらったバルプ大王特製の意味不明な地図を使わずに!)
DM「一応、ゴールドムーンのミニチュアも置いてください。」
PL「え?戦ってくれるの?」
PL「今回のゴールドムーンは、珍しくヤル気だなw」
DM「(いや、まぁ彼女の持つ杖が……)」
アングリフ「さて、始めるか。ラド、頼む。」
ラド「了解。」
ラドがまず、アングリフをエンラージ・パーソンの呪文で大型化させます。
次に、ストーンスキンの呪文により前衛のアングリフとヴィヌクの皮膚を硬化します。
さらに、全員に地上で浴びた黒竜吐く酸のブレスの対策にレジスト・エナジー(酸)の呪文。
そして、邪悪な者から聖なる力で身を守るプロテクション・フロム・イービルの呪文をかけます。
最後に、素早く動くことができるようになるヘイストの呪文をかけると、それを合図にして、トビンがドラゴンのねぐらに先行を開始します。
ラドの呪文により、パーティは以下の効果を一時的に得ています。
・アングリフ、【筋力】+2、【敏捷力】-2のサイズ修正、接敵面と間合いが10ftに
・アングリフとヴィヌク、アダマンティン製の武器以外からのダメージは10減少
・全員、酸によるダメージは10減少
・全員、邪悪な者からの攻撃に対してACに+2の反発ボーナス、全てのセーヴに+2の抵抗
ボーナス
・全員、移動速度1.5倍、攻撃ロールに+1、ACと反応セーヴに+1の回避ボーナス
ボスの部屋の前なので、事前にかけることができるだけ呪文をかけます。
一応、ラウンド単位の持続時間の呪文が含まれるため、ここからラウンド進行します。
トビン「通路の先に扉があるようだから、ちょっと行って見てくるよ。ええっと、〈忍び足〉で近づきます。コロコロ…、達成値18。」
トビンが〈忍び足〉で素早くドラゴンのねぐらの扉の前にやって来たときでした。
DM「はい、君が扉の前まで来た時、目の前の扉が自動的に開きました。」
トビン「えっ!?」
ザク・ツァロスの全盛期に、商いと公正の女神シーナリによって祝福されていた法廷だった場所は、〈大変動〉によって不正と絶望の祭壇と化していました。
天井はドーム形をしており壁の裂け目から月明かりが差しています。床はモザイクで、部屋の中央にある祭壇には、かつて女神ミシャカルを讃えて神々しい絵が描かれていたでしょうが、今はすり潰されて、禍々しい雰囲気を漂わしています。
そして、そこには地上の井戸のあった広場で遭遇したあの黒いドラゴンが、トビンたちの方へ口を開き、深く空気を肺に吸い込み、今まさに酸のブレスを吐こうとするところでした!
ここから正式に戦闘ラウンドに入ります。
ヴィヌク「よし、順番トップだな。先手必勝!ドラゴンに突撃します!」
ラド「2番目の私は、ドラゴンに向かってグリッター・ダスト。」
DM「ドラゴンは頑健セーヴ成功。盲目にはなりませんでした。」
ヴィヌクの突撃は残念ながら、ひらりとかわされました。
ドラゴンのいる場所にラドの魔法できらきら光る金色の粉が出現し、ドラゴンの体にまとわりつきます。
ラド「それで結構。目潰しはできなかったが、これで姿を消してもわかるはず。」
次はドラゴンの番です。
DM「では、酸のブレスを吐きます。ブラックドラゴンのブレスは直線ですから、この位置からだと、ヴィヌクとトビンが浴びますね。では、反応セーヴでドラゴンブレスをかわしてください。難易度は23で。」
ヴィヌク「了解、コロコロ。成功!」
トビン「反応セーヴ18だから、5以上か、余裕!コロコロ……、ギャーァ出目1!」
DM「えー、ダメージは22点、セーヴに成功した人は半減ね。え?1!?」
トビン「やっちゃった。orz」
ドラゴンブレスやファイアボールなどを受けて反応セーヴで1を出すと、装備しているものもダメージを受け、壊れる可能性があります。これが高価なマジックアイテムだったら、もう悲惨。
DM「じゃぁ何がダメージ受けたか決めましょうか。」
トビン「コロコロ、4。4番目だから……よかった!ただのダガーだ。」
DM「ダガーなら硬度無いし、たぶん壊れましたね。」
トビン「じゃぁ、ダメージ22点だけね。まぁレジスト・エナジーで、実質12点だけど。」
ヴィヌク「こちらはセーヴ成功したら半減で、実質1点だけかな。」
DM「次はゴールドムーンの番ですね。彼女は鈍い光を放つ〈青水晶の杖〉を掲げながら、ドラゴンの方へ近づいていきます。」
PL「ゴールドムーンは井戸で我々がドラゴンと戦ったときに別の場所にいたから、実は、まだドラゴンの《畏怖すべき存在》の影響を受けてないのでは……。」
PL「一度意思セーヴに成功した人は、24時間は再セーヴしなくて大丈夫ですけど」
DM「彼女は初対面だから、セーヴに失敗すると怯え状態になりますね。コロコロ……、ありゃ、失敗しました。」
PL「だめじゃん……。」
ゴールドムーンはドラゴンの恐怖に圧倒されて、攻撃ロールや、セーヴや、技能、能力値判定に-2のペナルティを被る"怯え状態"になってしまいます。
ゴールドムーン「私がなんとかしなければ!女神ミシャカルよ、私に勇気をお与えください!」
PL「なんだかイヤらしい演出だなぁw」
次のラウンドになります。
ヴィヌク「私は〈悪を打つ一撃〉を使用します。パラダインよ!この一撃に力をお与えください!」
ヴィヌク「コロコロ、出目1!? 主よ、私の信仰心が足りないのですか?orz」
アングリフ「おまえは、クラスの腰掛けが多すぎるのだ!」
ヴィヌクはアングリフと違って、クレリックとファイターとナイトという欲張りなマルチクラスなのです。つまり中途半端ってことで。
今度はドラゴンの鋭い鉤爪がヴィヌクを襲いますが、幸運にもその攻撃は外れました。
トビン「さてボクはどうしよう。あの硬そうな外皮じゃ、急所攻撃乗せないとダメージ抜けないだろうな。」
ラド「トビン、一端こっちに戻ってきてくれ。姿を消す呪文をかけるから!」
トビン「それって急所攻撃乗る?」
ラド「あぁ。だがドラゴンは《非視覚的感知》能力があるので位置はバレるけどね。」
トビンはラドにインヴィジビリティの呪文をかけてもらい、透明になります。
巨大化したアングリフは、「我が名誉は我が命!」と叫びながら、
ヴィヌクに目配せして、ドラゴンの脇に回りこみました。
ゴールドムーン「あぁ、ミシャカルよ!今こそ私に力を貸してください!」
彼女は手に掲げていた〈青水晶の杖〉を振ってドラゴンに当てます。
DM「コロコロ。お、一応命中。杖が青くまばゆい光を放って砕けちりました。」
PL「おお!」
DM「一応ドラゴンにダメージが入りましたよ。」
PL「初ダメージじゃん!」
PL「でも一応なのか……。」
DM「惜しかったね〜。杖のチャージ数がフルチャージだったら一撃で倒せたかも。」
PL「DM、フルチャージのままここまで来るなんて無理だから!!」
DM「ちなみに、その直後ゴールドムーンも光に包まれて消えてしまいました。」
PL「うひゃw」
リヴァーウィンド「ゴールドムーン!」
その光景を後ろで目にしていたNPCのリヴァーウィンドが泣き叫びます。
ヴィヌクはアングリフとはドラゴンを挟んで反対側に回り、ドラゴンを挟み撃ちにしようとします。
ヴィヌク「俺とアングリフに挟まれて生き延びたものなぞいない!さぁ、今度こそパラダインの加護を! コロコロ、ダメだ。またハズレた……。」
ラド「よし、私の出番だ。ドラゴンの後方に向けてファイアーボールね。」
DM「あ、ドラゴンは呪文抵抗(Spell Regist)を持っているから、それを破ってください。難易度18で。」
ラド「コロコロ、出目12か。術者レベル+8で20!破ったよ。ダメージはコロコロ、34点ね。」
DM「OK、じゃぁドラゴンの反応セーヴは……っと成功。ドラゴンは半分の17点を受けました。」
ラドの火球の呪文を受けたドラゴンは、息を肺に大きく吸い込んでブレスの用意をし、一端上空に飛び立とうとします。
アングリフ「では、飛び立とうとするドラゴンに機会攻撃を。"Strength of Honor"を能力を発動させて【筋力】を+4上げます。コロコロ、よし命中!ダメージは19点、さらにクリティカルで19点。」
ラド「またブレスか。では、ドラゴンの手前にウィンドウォールの呪文を唱えて、風の壁を出現させます。これでこっちにブレスは吐けないはず!」
DM「はい、ドラゴンの前方に、風の壁ができました。」
ドラゴン「この小癪な人間どもめ!」
およそ10ft上空に留まっているドラゴンにアングリフとヴィヌクは攻撃をしかけますが、中々ダメージを与えることができません。
フリン「ワシの弓もさっぱりじゃ……。」
次のラウンドです。
ラド「移動アクションでスクロールを取り出し、特技〈Heroic Surge〉を使って移動アクションを追加、通路を抜けてドラゴンに近づき、ライトニング・ボルトをドラゴンに向けて発動!呪文抵抗は破った!反応セーヴを!電気ダメージ16点。」
DM「む、失敗。」
トビン「ラドかっこいい!」
ドラゴン「おのれぇ!許さんぞ!」
再び大きく肺に息を吸い込んだドラゴン、
目の前にいたフリンとヴィヌクに焼けるような酸のブレスをあびせます。
フリン「ぬ、反応セーヴ、出目10じゃ。失敗した。ダメージをくれ。」
ヴィヌク「こちら出目20、また成功。」
フリン「仕返しじゃ!、全ラウンドアクションで弓を2度打ち。よし、どちらも命中。ダメージ8と7で。」
ラド「私は、今度はドラゴンの後方にウェブを発生させて、ドラゴンの動きを蜘蛛の糸で封じます。」
その結果、ドラゴンは反応セーヴに成功し、動きを封じることはできませんでしたが、移動にはかなりの制限がされました。
アングリフ「よし。ヴィヌク!ナイト・オヴ・クラウン、フォーメーションAだ!とぉ!」
トビン「ふぉ、フォーメーションA?」
ドラゴンをヴィヌクと挟んで挟撃状態にし、アングリフが必殺の攻撃を行い、計16点のダメージを与えました!
ヴィヌク「よし、フォーメーションA!とぅ!コロコロ……。」
ヴィヌクもドラゴンに攻撃しますが、普通にハズレ…。orz
アングリフ「ぬぬ!このフォーメーションAを破るとは!ドラゴンめ!なかなかの強敵だ!」
ラド「はいはい。私はヘイストが切れそうなので、ヘイストのスクロールを取り出して、ここでかけますね。」
ドラゴン「もう茶番は終わりだ!わらわの怒りを受けるがよい!」
ドラゴンはヴィヌクに向けてフルアタック!噛付き1回、鉤爪2回、翼2回、尻尾1回という集中攻撃です。
ヴィヌク「ぐぅぁ……。」
トビン「ヴィヌク、生きてる?」
ヴィヌク「あぁ……、残りのHP3。」
トビン「ひぃぃぃぃ!」
アングリフ「よし、ヴィヌク!今度はフォーメーションBだ!」
トビン「さっきと同じだと思うんだけど……どこが違うの?」
アングリフ「うるさい!とぉ!命中!ダメージ21点!」
その瞬間、絶叫じみた凄まじいドラゴンの咆哮がこの廃都中に鳴り響き、黒い大きな体が、まるで巨木を倒すかのようにゆっくりと地面へ倒れていきました。
アングリフ「ふっ。やはりフォーメーションBでなければならぬな。」
エピローグ
トビン「さて戦利品収集タイムだ!ドラゴンのいた場所に宝の山があるようなので漁りますよ。」
その結果、トビンが見つけたもの(後で鑑定)
[戦利品]
・ミシャカルの円盤
・プラチナ貨785枚
・鋼貨6775枚
・紫色のガーネット(400stl相当)×4
・黄金色のトパーズ(300stl相当)×3
・トルマリン(60stl相当)×30
・ワンド…ワンド・オヴ・インヴィジビリティ
・クローク…クローク・オヴ・カリスマ
・ポーション×2…プロテクション・フロム・ファイアー(術者レベル8)
そして、宝物をすべて回収し終わったころ……。
DM「ええっとお約束なんですが、先ほどのゴールドムーンの杖の力とドラゴンの絶叫で、このザク・ツァロスの洞穴が崩落しはじめました。」
PL「この手のダンジョンって必ず最後には崩壊するよね……。」
DM「大量の水が廃都に流れ込んできます。具体的にいうと、10分程度で1フィートほど水かさが増していっているようです。」
PL「大変だ!」
DM「本当は自力で脱出してもらうのですが、もう時間なので今回は省略し、エピローグへ進みます。」
PL「助かった……。」
パーティたちは何とか地上のミシャカルの神殿までたどり着きます。そう。女神の像があり、ミシャカルの啓示を受けた場所です。
そこには一人の蛮族の女性がパーティたちを待っていました。
リヴァーウィンドが走り出し、彼女に抱きつきます。暫しの接吻の後で、戻ってきたパーティたちに、にっこりと暖かい微笑みをかけるゴールドムーン。
彼女の首には、女神の像にかかっていた銀のメダリオンが輝いており、砕け散った青水晶の杖は、今や女神ミシャカルの像の手に完全な形で収まっています。
ゴールドムーン
「私は、今や真の僧侶(クレリック)となりました。私はミシャカルの使徒、癒し手となったのです。」
「貴方達はミシャカルの円盤を取り戻してくれました。クリンの均衡を回復するために、邪悪と戦う力を持つ者を捜し、わたくしの義務を果たさなければなりません。」
リバーウィンドがそっと彼女の腰に手を回します。見詰め合う二人。
──そして。
「わたくしたちは、秋が訪れたら結婚しようと思います。貴方方も是非いらして、我々を祝福してください。」
一同「もう勝手にしてくれ!!」
おまけ
そこに、どこから出てきたのか一匹のどぶドワーフが顔を出し、ラドの元にやってきます。
ラド「なんだ?」
ブープー「おら、あんた、きらい。だけどどらごん、やっつけてくれた。だから、あんた、これいる?」
彼女は、持っていた袋から一冊の夜藍色をした本を取り出します。ラドグエルは震える手で、その本に手を伸ばまします。
ラド「これは、かの有名な大魔法使い、フィスタンダンタラスの呪文の書!」