MAY YOUR POUCHES NEVER BE EMPTY!
君の小袋がいつまでも空っぽになりませんように!
author michi

Dragons of Autumn Twilight / 秋の黄昏の竜
ドラゴンランス 廃都の黒竜の書 その1:その2その3戻る


ちょっと花見がてらクリン行ってくる!







 桜で賑わう某所の地下鉄の出口。
 そこに集まったのは、明らかに花見客ではない、なにやら書籍で一杯の荷物を持った輩達。



 彼らの目的は、その昔心を躍らせながら読んだドラゴンランスの小説の世界クリンを、 ダンジョンズ&ドラゴンズの D&D 3.5版のルールで旅することでした。  皆集まったこと確認し合うと、D&D関連のルールブックで一杯の重荷重の荷物を持って、いそいそと会場入りします。

キャラクターの作成


 まず簡単な自己紹介のあと、[4d6一発振り]*で各キャラクターの能力値を決め、キャンペーンのスタートレベル7のキャラクターを作成しました。

4d6一発振り
 D&Dのキャラクター作成時の能力値の決め方の一つ。最近は、こうやってダイスの振るのは割とトラディショナルな方法。

 設定はもちろんドラゴンランスの世界で、いわゆる〈大変動〉の後のクリン。小説の読者ならお分かりかもしれませんが、他のD&Dやファンタジー世界との大きな違いが2点あります。

・いわゆる〈竜槍戦争〉が起き、"鉄"の価値が"金"より高くなっていること
・約300年前に真の癒し手が姿を消し、治癒系の呪文の使い手が存在しないこと

 鉄の価値が高いので基本貨幣は金貨(gp)ではなく鋼貨(steel/stl、スティール)になっており、1stl = 40gp の価値があります。まぁこれはいいとして、一番の問題は癒し手(ヒーラー)が居ないこと!
 もちろん通常のD&D3.5版では定番となっている、キュア・ライト・ウーンズ(軽量治癒)のワンドやポーションさえありません。戦闘が終わっても、失われたヒットポイント(HP)は自然治癒以外に元に戻らないのです!これはかなりシビアな世界。

 レギュレーションはD&Dのコアルールとドラゴンランスの追加サプリの範囲で、皆四苦八苦しながら、最終的にキャラクターは次のように決まりました。

フリン・ファイアフォージ、ドワーフの7レベルファイター
 Kさん、D&Dミニチュアの収集家。しかし今回がD&D3.5の初プレイ。いきなり7レベルのキャラクターを作成することになりましたが、無難にファイターを担当し、嬉々としてキャラクターを作っていました。

ラド・グエル、人間の7レベルウィザード
 ジョウセンさん。ローブの色は不明。
   通常ウィザードは1つの禁止系統の呪文を持つことにより、1つの系統の専門家になることができます。しかし白・赤・黒ローブのウィザードたちは、さらに専門家の道を究めていますが、もう1系統を切らなければならず、それを嫌がった彼は、あの〈大審問〉も受けずに異端なはぐれ魔術師として、ローブの魔術師から追われる身となってしまいました。

トビン・ディープポケット、ケンダーの1レベルレンジャー/4レベルローグ/2レベル[ハンドラー]*
 はい、私です。ローグ枠ということで、種族は[恐怖]に対する完全耐性を持つケンダーを選択し、クラスはケンダー専門のローグの上級クラス、ハンドラーを選びました。
 このクラスの特徴はスリ。あのタッスルホッフ用のクラスだといえば話は早いでしょう。

そしてDMは、霧島さん
 クトゥルフの呼び声やD&DなどのゲームをやりこんでいるベテランDMさんです。

 プレイヤー3名とちと寂しいですが、人が少ないので、ファイター・ローグ・ウィザードとほぼ定番クラスになっており、クレリックはいないことになっているので、これはこれでバランスがとれいるかもしれません。

 昼過ぎから始めたキャラクター作成も、ルールなどが英語版しかないことも あり、終わったときにはすでに夕方。
 ここで休憩。軽く食事に出かけます。



憩いの我が家亭


 簡単な食事から戻ってきて、霧島さんマスターのナレーションと共にいよいよ冒険の開始です。

 ──まことの神々が〈大変動〉によって失われてから時が過ぎ、AC(After Cataclysm:大変動後)361年、9の月、13日。
 フリン、ラド、トビンの3人は旅の仲間。まことの神々がいるのかどうかの探索の旅し、5年後の再会ため、ソレース村の〈憩いの我が家亭〉に戻ってきたところでした……。

〈大変動〉
 300年以上前にクリンの地を襲った神々の怒り、天変地異。これにより、人々は失望し、まことの神々の信仰は失われて、癒し手が居なくなり、クリンの地に偽りの神々の信仰が蔓延する。

 彼らはソレースのバレンウッドの太い幹の上に建ち、主人のオティックの揚げる香ばしいジャガイモの臭いが立ち込める、〈憩いの我が家亭〉にパーティはいました。
 久しぶりだとオティックと話したところ、このところソレースは、怪しげな似非カルトのシーク教徒が幅を利かせており、住民たちの悩みの種になっているそうな。

フリン「村に入ったときに会ったのは、やつらだったのか……。」
ラド「困ったことになりましたね。」

 実は彼らは、ここに来るまでに、兜の下に豚を思わせるような顔をしたホブゴブリンの警備隊に襲われております。




 さて、店内を見渡すと、まず蛮族のカップルが一組(いや、皆まで言わないでwww)、カウンターに男が一人、テーブルの老人が一人(はいはいwわかってますよ〜w)、それから、給仕の少女と、近所の少年少女が何人か。

PL「あーティカだ。」
DM「ティカの能力値は……【耐久力】13。【魅力】14だよ」
PL「大きくなったなぁ。胸がwww」
ティカ「なにいってるのよ、この不細工。」

 PCたちの【魅力】の能力値、5、7、11。たしかに不細工集団です。orz
 さて、ここで〈情報収集〉ロールを行います。

トビン「ねぇ、シーク教徒って何してるのさ?」
オティック「シーク教徒はな、魔法の杖を捜しているそうな。怪しげな杖。闇の森で作られたのかもしれんな。」
ティカ「シーク教徒や魔法使いの連中とはかかわらないほうがいいわよ!」
カウンターの男「そういえば、待ち外れて奇妙な杖を持っている男がいたぞ!」
フリン「シーク教徒か……。まともな連中じゃなさそうじゃな。」
オティック「ヘイブンからシーク教徒の司祭ヘデリックがこの村に来ておる。彼らはいけ好かない連中だが、ヘイブンにいる司祭のエリスタンはまだまともなやつらしいと聞くが。」

 ここででました、パラダ……いや、テーブルの老人が突然立ち上がり、PCたちに向けて話し出しました。

老人「大いなる困難が、お前たちを待っておる。〈青水晶の杖〉をザク・ツァロスへ持っていけ!」
パーティ一同「いきなりかよ!」

トビン「(うーん、この老人ってやはりあのお方だよなぁwww)」
トビン「DM、黙ってストーリーに乗っかるのもアレなので、その怪しげな老人に対して、スリに挑戦してみます!」

 ハンドラーなんてクラス、ココで活躍しなければ、ドコで活躍するんでしょうかw
 まぁ、一発ネタだなーっと思いながらロールした〈手先の早業〉の達成値は、19。

D&D3.5 版では、戦闘以外の様々な行動の判定には、技能ロールを行ないます。
1d20 にキャラクターの技能ランク+各種修正値を加えた値が達成値となり、予め決められた難易度の値以上か、もしくは対抗する技能の達成値以上になれば、その行動は成功します。
ちなみに、〈技能〉の表記はこのように括弧で括ります。
D&D3.5 版では〈技能〉は《特技》と並んでキャラクターを個性付ける要素の1つです。

DM「──ええっと、対抗ロールとして相手の〈視認〉は……、負けた。」
PL「相手が悪いwそりゃ負けるってw」
トビン「やったー!老人の懐から見事アイテムGET!さて、どんなアーティファクトが入ってるんだろw」
DM「トビンがコッソリ手にしたものを見てみると、ふわふわした羽毛の羽が……。」
トビン「('A`)……。」

PL「フェザー・フォールの呪文のマテコン(呪文構成要素)かよ!!」

 がっかりしたトビンは、ラドのマテコンポーチにそっと入れておいてあげました。
 そこで蛮族のカップルが我々の方へ近づいてきます。

蛮族の女「あなたたちの傷ついていますね。その傷ですが、癒せるかもしれません。」

 彼女は持っていた杖を我々の傷に当てると、杖の先端に付いている青水晶が輝き、先ほどの戦闘で失っていた傷が癒されていきます……。

パーティ「あれあれ、傷がなおっていくぞ、ありがたやー!(棒読み)」
DM「皆、ヒットポイント3点回復ね。彼女は今度はそばにいた近所の子供の傷も癒していきますよ。」

トビン「すごいや!よし、じゃぁリベンジで、今度はこのゴール……いや蛮族の女のポケットを……。」
DM「またですかw では、トビンが彼女のポケットに手を入れようとしたところ……。」

店に入ってきた男「冒涜だ!」

トビン「ビックッ!え?!Σ(Д;;д) 自分ですか!?」
店に入ってきた男「神への冒涜だ!この魔女め!」
トビン「あ、自分じゃなくて……って、これはまさか!?」

 男はそう言った後、外に出て「ビィー」と村に響き渡る警笛を鳴らし始めます。

PL「アイタタタ。ここでこの長いキャンペーンとなるフラグが立ったわけですか!」
ラド「お嬢さん、逃げましょう!」

 青水晶の杖の持ち主の蛮族の女性に話しかけ、席を立つパーティたち。

ティカ「まったくもう!台所の奥に秘密の出口があるわ!その後私の家で隠れてて!」

奥に行ってみると、確かに出口があります。ていうか、緊急用シューターみたいな……。ロープが一本垂れ下がっているだけですね。

PL「やっぱりここを降りなきゃダメなんだよな。」
DM「はい。一応、〈登攀〉ロールね。平均値の 10 以上だせばOKってことで。」

・フリン、成功。
・ラド、トビンの盗んだマテコンでフェザーフォールでゆっくりと着地。
・トビン、1d20ロールで9、〈登攀〉の修正値+2で、達成値11。

トビン「ヒュゥー、なんとか平均値10超え。結果、成功。危なかった……。(‘∀`;)」

ってことで、青水晶を持つ娘を伴って追われる身となったPCたち。この杖のことはヘイブンのエリスタンに聞けば、何か分かるかも。いや、あの怪しげな老人がいうにはザクツァロスに持っていけと……。

ソレースからの脱出


 〈憩いの我が家亭〉で、蛮族のカップルが使った古の神々の奇跡といもいうべき癒しの力。その奇跡を目にしたシーク教徒が、村中を癒しの杖を捜しまわっています。

 なんとか〈憩いの我が家亭〉の裏口から脱出したパーティでしたが、とりあえず給仕のティカの家に避難しております。

ラド「さてと、まずは自己紹介と、その不思議な杖について話してもらうかな。」
蛮族の女「申し遅れました。私の名前はゴールドムーン、ケ=シュ族の族長の娘です。彼はリヴァーウィンド。私の……。」

 話によると、ゴールドムーンを妻にするため、リヴァーウィンドがその証しとして廃都から持ち帰った〈青水晶の杖〉のために、村を追われる身となり、彼女と駆け落ちすることになり、このソレースまでやってきたようです。

 さて、ここも安全とはいえないため、夜のうちに脱出することにしました。問題は何処へいくか。

ラド「ザク・ツァロスに一票」
トビン「彼らも杖をシーク教徒の手に渡すのはイヤそうだし、ええっと、良かれ悪しかれ、あの老人の導きにしたがう他ないんじゃない?」
フリン「やれやれ。あの得体の知れない怪しいじじいのせいで、わしらはヒドイ目にあったと言うのに……ふむ。」

と蛮族の方を見て、

フリン「杖をヘイブンに持っていくことは避けるべきじゃろうな。ソレースで遭ったような、シーク教徒がらみの物騒な事件はもうまっぴらじゃ。ちょっとシャクじゃが、あの語り部の老人のすすめに従ってみるか……。」
トビン「そうそう。きっと杖よりもっとステキな宝が眠っているに違いないYO!」

 そのとき、ティカの家の扉がバタンと開きます。

謎の侵入者「話は聞かせてもらった!」

 振り返るパーティたち。すかさずリヴァーウィンドが武器を構えます。

リヴァーウィンド「追っ手か!?」
トビン「あ、この声は……。」
ラド「大丈夫です、平原の民よ。仲間です。」

DM「そこに立っていたのは、一人のソラムニアの騎士でした。」
PL「何という、強引な展開!?」

フリン「アングリフ、驚かすな。」
アングリフ「すまぬ。憩いの我が家亭でティカに聞いたのだ、皆ここにいると。」
トビン「つけられなかった?」
アングリフ「大丈夫だ、と思うが……。」

 はい、ここで4人目のPC、植埜さんが操るソラムニア騎士、アングリフ・ブライトブレードが仲間に加わりました。つもる話は置いておいて、先ほどの話の続きを再開し、結局、ザク・ツァロスへと旅立つことになりました。


平原を越えて


 ザク・ツァロス。ソレースからアバナシア平原を東に進み、イーストウォール山脈を超えた先の湿地帯の遥か北東にある廃都。約100マイルほどの行程になります。



 長旅になりそうなので、ティカの家にあった保存食を一週間分ほど拝借し、「ゲートウェイまで行く。」とワザと間違った置手紙をラドが残し、家を出ました。
 一端、村はずれの安全な洞穴で一夜を過ごし、早朝、ラドのマウントの呪文で馬を3頭出して、それに乗って移動します。
 まずは、遥か東方に聳え立つイーストウォール山脈を目指し、平原の民の集落、ケ=キリまで15マイル、そこから蛮族のカップルの故郷のケ=シュまで15マイル進みます。
 最初のケ=キリ族の村まで3時間で到着しましたが、行く手をケ=キリ族に阻まれました。

「まてまて、この先に進みたくば迂回をするがよい。村には決して入るべからず!」



 同じ平原の民のゴールドムーンたちの方を見たところ、しらんぷり。しょうがないので、トビンが先を急いでいるので村を通してくれと〈交渉〉しましたが、失敗。

ラド「ファイアボールで(村を)焼き払った方がいいかな?」
トビン「(ちょっと見たい気もするけど……)ここは押さえてYO!ラド!」

 ちょっと、あなた。サラリと恐ろしいことをいいますね。結局、村を迂回し、先を進みます。
 ケ=キリを出て、次はケ=シュまで15マイル、また3時間。ケ=シュはゴールドムーンたちの故郷で、駆け落ちした二人ですが、ここを通らなければ、目指す廃都ザクツァロスまで行くことができません。
 暫く進んだところ、トビンは遠くで男性の「たすけてくれ〜」と叫んでいる声を聞きつけます。そのまま進んだところ、120フィート先で何者かに追われている男がこちらに向かって逃げてきておりました。



DM「逃げる男の後ろには、何匹かの武装したトカゲ男がいますよ。」
トビン「誰かが追われているようだけど、助ける?」
フリン「そうしたほうがよさそうじゃな。」

 ラドは、〈知識〉ロールに成功し、奴らの正体が判明しました。

ラド「まずいな、あれはバーズドラコニアンだぞ!奴らは死ぬと石化する!」
アングリフ「石化とな?」
フリン「すなわち、石化すると突き立てた剣が抜けぬというわけじゃな。」

 戦闘開始です。



 まずは、ラドのファイアボールで迫るドラコニアンの1名を倒します。アングリフは逃げてきた男に「まかせたまえ」と自身を持った顔でいうと、トビンを降ろし、そのまま男を通り越して疾走しながら弓を構えて撃ちますが、当たりません。フリンも負けずに《速射》をして、一匹倒します。
 生き残ったドラコニアン2匹がアングリフに向かってきますが、アングリフはそのまま馬で突撃して、ドラコニアンを撃破。トドメを刺したランスを引いた直後、ラドが言ってたように、ドラコニアンはみるみるうちに石化していきました。最後1匹は、フリンが《速射》で片付けて、戦闘が終わりました。

《速射》は遠隔武器での攻撃に、1回の追加攻撃を得る特技です。
D&D3.5 版では、レベルが高いキャラクターほど多くの特技を持っており、 その種類に応じて様々な特殊能力を得ることができます。特技は、このように《特技》で括ります。

男「ありがとうございます。私は、ケ=テ族のナイトシェードといいます。数日前、あのトカゲ男たちが我々の村に攻め込んできて、杖を出せと村を荒らしていきました。私は村を代表してケ=シュ族へ助けを求めに向かっていたところ、奴らに見つかり……。」
ラド「なるほど、そういうことでしたか。実はケ=シュは道中なので、同行しましょうか?それに……。」
ゴールドムーン「ええ。私はケ=シュ族の族長の娘、ゴールドムーンです。そういうことでしたら、私が父に頼んでみましょう。おそらく彼らが捜し求めていた杖というのは、これでしょうから……。」


ケ=シュ族の村


 男と同行し、ケ=シュに急ぎますが、帰還するゴールドムーンたちを待っていたのは、黒い噴煙を上げ、建物は壊され、いたるところに死体が転がっている、村の変わり果てた様子でした。

フリン「いったいぜんたい、どういうことじゃ?」
トビン「道に迷ってアビスの奥底に来たわけじゃないと思うけど」

 村には生存者はいないようです。ラドが死体を見た限りでは、死んでから半日ってところで、今朝に何者かの襲撃を受けたようです。

アングリフ「とりあえず、村の中心に行ってみよう」

 村の広場に駆けつけるパーティたち。中央の広場には、真っ黒に焦げた貼り付け台が残っており、そこには、焼け爛れて真っ黒になった死体が貼り付けてあります。

リヴァーウィンド「族長!」
ゴールドムーン「!おとうさま!」
アングリフ「なんてことだ!」

 すぐさま、父の遺体を取り外して抱きかかえて号泣する二人。あたりに残っていた足跡から、この村を襲ったのはさっき戦ったドラゴニアンたちのようです。

アングリフ「見ろ、ここに何か巨大な爪で殴り書きしたようなメッセージが!」
トビン「なんだかこれってドラゴンの爪で殴り書きしたような感じなんだけど」
フリン「ドラゴン?そんなものは伝説上の生き物じゃろう?」
トビン「いやいるんだきっと。赤いドラゴンのブレスで真っ黒にされたのかもしれないよ!」

 コンプリヘント・ランゲージの呪文で解読を試みるラド。

ラド「これはネラーカ語だ。『これが我が命令に逆らった者の末路だ。ベルミナルド』 酷いな……」

しばしの調査の結果、奴らの足跡は、我々の行く先、東のイーストウォール山脈の方に向かっており、生き残った村人はおそらく彼らに捕虜として連れていかれたらしいことがわかりました。

ゴールドムーン「私は族長の娘として、捕虜となった一族の者たちを救出する義務があります。どうか改めて私どもに力を貸していただけませんか?」
アングリフ「これも何かの縁。騎士の名誉にかけて助けになろう。」
フリン「やれやれ。故郷は邪悪なヤカラに席巻させられ、今度はドラゴンじゃと?」
トビン「でも、本物のドラゴンに会えるかもしれないよ!」
ラド「それならマウントの呪文が切れるし、先を急ごう。」

 とりあえず、族長の遺体だけでも安全なところに安置します。そうそう、ケ=テ族のナイトシェードも同行することになりました。


イーストウォール山脈


 3時間ほど進み山に分け入ったところで、突然前方のほうで、大地が脈を打ち、全身が甲羅で覆った生き物が姿を現しました。

ラド「気をつけろ!ブレイだ!」



 〈知識〉ロールに成功したラドが叫びます。なんでも戦闘中にとびあがって爪攻撃を4回行う凶悪な敵です。

アングリフ「我が名誉は我が命!突撃!」

 トビンを降ろしたアングリフが馬で、現れた敵に突撃を仕掛けます。48のダメージ!幸先が良いと思いきや、今度はブレイに攻撃されて愛馬をボコボコにされます。
 ラドはヘイストを唱え、グリッターダストで敵を盲目にすることに成功。
 これで接近戦は怖くなくなり、アングリフとトビンとフリンの攻撃であっという間に撃退に成功しました。
 傷ついた馬に杖の奇跡を使用するゴールドムーンに、
ラド「貴重なキュアのチャージが……。」


見捨てられた街道


 山を越え、そろそろ夕暮れとなってきた頃、見捨てられた街道と呼ばれるところまでやってきました。このあたりは梟の頭を持った熊のような生き物、アウルベアの生息域らしいです。
 しばらく進むと、かつて東側からの進入を防ぐために築かれた砦の跡が見えてきました。跡と言ってもまだ城壁が一部残っています。
 とりあえず、トビンが先行して様子を伺いに。城壁の影で「ぐるるぅー」と何か生き物の気配を感じます。さらに〈忍び足〉をしながら近づくトビン。そっと覗くと、3体のアウルベアが鹿の肉を漁っている光景を目にしました。戻って、パーティに知らせます。
 さすがにこれでは先に進めないし、そろそろ日も暮れるため、奴らを撃退することにします。戦闘開始。
 まずはラドのとっておきの呪文、エヴァーズ・ブラック・テンタクルスで、 アウルベアを地上から出現させた触手で絡めて動けなくさせます。
 それを逃れた一匹がパーティの方へ向かってきますが、影に隠れていたトビンが急所攻撃を行ないます。
 さらに触手の絡み付きから脱出した一匹を、ラドがアイス・ウォールの呪文で氷の壁を出現させて足止めします。
 D&Dのウィザードは、一日に覚えてきた呪文を使い切ると、翌日呪文の書を見て覚え直すまで、呪文を使うことができなくなりますが、ラドは、もう夕方だからなのか、高レベル呪文を惜しみなく使っています。



フリンの弓とアングリフの突撃によって、1匹を撃破しましたが、
2匹目に組み付かれピンチになってしまうアングリフ。
フリンとトビンの攻撃により、何とか撃退し、
残った3匹目に再びアングリフが突撃をかけ、撃破して戦闘は終了です。

今日はここで野営し、明日はいよいよザクツァロスに到着するでしょう。

沼地


 廃都ザク・ツァロスに至る道には、300年以上に渡って腐臭を放ち続けている広大な沼地が待ち受けていました。このあたりはすでにドラコニアンの一団に占領され、今、その勢力はパーティが横断してきたアバナシニア平原の南のニューポートにまで迫ろうとしていました。
 ぬかるんだ足場を進むパーティの目の前には、アイアンクロウの太い木の根の橋が見えます。
 まずDMから〈視認〉チェックを要求された結果、PCたちがロールした達成値は23〜1。ラドとトビンが橋の脇の毒々しい沼の中から青白く光る3つの目のようなものが、こちらを見ており、その周りから触手のようなものがウニョウニョとうごめいていることに気付きます。



トビン「まずい!何か来るYO!」(達成値23の人)
アングリフ「へ?ウグッ」(達成値1の人)

ピギャァーー!

 その生き物の巨大な影が沼の中から姿を現して触手がアングリフに襲い掛かり、不意を打たれたアングリフは11点のダメージを受けます。

──ということでいきなり戦闘ラウンドに突入します。
最初のラウンドは、気付かなかったフリンとアングリフは行動できません。

ラド「あれは……、ウィンドラス!?」

 ラドの〈知識〉では名前くらいしかわかりませんでしたが、とりあえず迫り来る敵の目にグリッターダストの呪文をキャストし、敵の目を金色の塵で一時的に盲目にすることに成功します。

ピギャァーー!

 フリンは兎に角、弓を構えて得意の《速射》。あの触手で沼に引きずり込まれては脱出できなくなりそうなので、一端皆、下がって敵と距離を置こうとしますが、足元は泥濘で移動力を2倍消費する"移動困難"地形。すぐには後ろへ引くことができません。

トビン「沼に引きずりこまれないように下がらないとダメだYO!」

と言いながらも、実は初戦なので少し余裕をかましていたトビンに、ウィンドラスの全力攻撃が襲います。

DM「ええっと、ではトビンに全力攻撃。触手10本分ですね。」
トビン「なぬ!10本!?死ぬー!」

20%の攻撃失敗確率があるこの陰気な"薄暗い照明"の環境もあって、
敵の10回攻撃の内、トビンに命中したのはたった3本でしたが、
受けたダメージは計35ポイント。DMも容赦がありません。

トビン「はぁはぁ……。ええっと、トビンのHP35だからちょうどゼロ。立ってることが精一杯の満身創痍状態か……。orz」

 なんとか持ちこたえたトビンでしたが、これではもう戦うことができません。ふらふらになりながら少しずつ敵から離れようとするトビンの前に、

アングリフ「我が名誉は我が命!」



 と、愛馬スタームに跨ったアングリフがカッコよく現れ、巨大な敵の影にランスで攻撃を浴びせます。

ピギャァーー!

 かなりのダメージを受けた敵は、怒り狂いアングリフとスタームを攻撃。

「うーん、スタームがやられた……、死亡」

 その刹那、(愛馬)スタームの太陽は砕け散った──。まだ一巻目の途中なのに早っ!触手の全力攻撃により、愛馬スタームが倒れます。

ラド「マズイな……。」

 このヤバそうな状況にラドの魔法の矢、マジックミサイルが敵に命中し、まるで巨大な蛸のようなその化け物は倒されました。

アングリフ「スターァム!!!!!!」

 動かなくなった愛馬スタームの前に、号泣するアングリフ。

トビン「お昼は馬刺しとたこ焼きかぁ」
アングリフ「……トビン、お前はなんてことを!」

 怒るアングリフに、近寄って徐に愛馬の尻尾をちょん切って渡すラド。

ラド「いや、アングリフ。奴はもうこのままでは供に行けない。食して我らが血となり肉となるのが奴と供に行く方法……」

トビン「それより、早く治して。立ってるだけでフラフラなんだけど……」

 癒しの青水晶の杖を持つゴールドムーンをせかして回復を受け、お昼の食事をした後、再び進みだすパーティなのでした。

アングリフ「スターム……。」
トビン「あー、食った食った♪」

ドラコニアンとの魔法合戦


 さらに進んだところで、またもや太い丸太が架かった川に出ました。
 〈聞き耳〉判定に成功したトビンは、近くに4体、対岸に2体、何か生き物が潜んでいること感知します。

トビン「気をつけて!また何かいるよ!」
ラド「何!?あれはドラコニアン!」



 ここで、戦闘開始。
 ラドは呪文を唱えてトログロダイトに変身、外皮を硬くし敵の攻撃に備えACを上げます。
 フリンとトビンとアングリフは散開し、敵をに近づいていきますが、ドラコニアンのウェブの呪文が発動。

PL「まずい、敵は術者か!?」

 そう思った時にはすでに遅く、トビンとフリンのアングリフは魔法の蜘蛛の糸の中にいました。

DM「(蜘蛛の糸を回避する)目標値18ね。」
トビン「コロコロコロ〜、あちゃ出目4。でも達成値19で余裕!」(セーヴ成功)
フリン「ワシも成功じゃ。」
アングリフ「しまった!動けぬ!」(セーヴ失敗)

 トビンもズバ抜けた反応セーヴで難なく回避、続くフリンも回避成功でしたが、アングリフは失敗、突然あたり一面に出現した蜘蛛の糸に絡みつかれてしまいます。

セーヴ/セーヴィング・スロー
キャラクターが罠や魔法、敵の特殊攻撃を受けたとき、キャラクターがそれを無効化やダメージの半減をすることができるかの1d20をする判定ロールです。
D&D3.5eでは以下の3種類があります。
・頑健セーヴ…毒や麻痺などの耐性のチェック
・反応セーヴ…落石・落とし穴やドラゴンブレスなどの反射的な判定チェック
・意思セーヴ…精神的な魔法攻撃などの意思の強さの判定チェック
1d20の出目に、選択したクラスレベルによって異なる基本値と、関連能力の修正値を追加したものがセーヴ値となり、対象の目標値以上を出せば判定に成功します。
(ちなみに技能ロールは能動的判定、セーヴのロールは受動的判定である)

ラド「難易度高いな。じゃぁこちらも。ウェブで」

 奴らの2体にウェブの呪文で敵を蜘蛛の糸に絡めとりますが、動けなくすることは敵のセーヴで抵抗されてできませんでした。
 蜘蛛の糸の範囲を脱出しようとしていたフリンに何か呪文を唱えますが、フリンはすばやく逃げ出して、弓で敵の術者を射撃し敵の呪文の詠唱の邪魔をすることに成功。
 アングリフの側で同じく呪文を唱えようとしていた敵に、絡まれたままのアングリフのランスの機会攻撃が命中し、撃破することに成功。

ラド「では、ファイアボール。」

 ラドは、ファイアボールの呪文を唱え、2体のドラコニアンを炎の爆発に包み込みます。しかし敵はセーブに成功し、あまりダメージを与えることができませんでした。



 シュルシュルシュルと、長い舌を震わせて答えるドラコニアン

ドラコニアン「ふっふっふ、この雷でもくらえ!」

 どうやらこの者たちは全員が術者だったようで、ドラコニアンが、雷撃の呪文ライトニングボルトをキャストし、直線状にいたフリンとラドに雷撃の光線を浴びせます!
さらに別のドラコニアンが、蜘蛛の糸で絡まっているアングリフにライトニングボルト。

フリン「こ、こいつは痛い。」
ラド「うぐっ、では今度は、これでどうだ!」

うにょうにょうにょ──。

 呪文をキャストしたドラコニアンのあたり一面に、地面から触手が出現しました。地上にいる彼らを雁字搦めにする悪趣味な呪文エヴァーズ・ブラック・テンタクルスです。結果、彼らは頑健セーブに失敗して、完全に捕らえることに成功。



 戦場は、敵と味方の放ったウェブやらテンタクルスの呪文の影響で、触手やら蜘蛛の巣やらで混沌としている状態になってきました。

トビン「なんだよ!こっちにこいよ!腰抜けトカゲやろう!」
ドラコニアン「なんだとぉ!このケンダーめが!」

 足が遅くて泥濘のおかげで殆ど移動できないトビンもハンドラー得意の能力《罵り》で相手を罵って、敵の攻撃ロールとACを下げます。

 対岸で見ていたドラコニアンたちが丸太を渡りかけつけようとしたところで、ラドのウェブが決まり、足止め。さらにグリッターダストを浴びせ、敵を盲目にさせることに成功。

アングリフ「いい加減、降伏しろ!」
ドラコニアン「うるさい!降伏するのはおまえたちだ!」

 その後、まだ暫く戦闘が続きましたが、最後、ラドが放ったスティンキングクラウドが決め手となり、何とか彼らを降伏させることに成功しました。
 効力の落ちた青水晶の杖で傷を癒した後、

トビン「ドラコニアンの尻尾って、ちょん切ったらまた生えてくるか知りたかったんだよね〜!」

という興味津々のケンダーを制し、彼らを尋問します。

フリン「お前たちは何者でここで何をしていたんじゃ?」
ドラコニアン「我々は、新たな力によってこのクリンに産まれし者。我々はキサンス様の命によってここを守っている。」
アングリフ「キサンス様ってのは?」

 ニヤっとするトカゲ人間。

ドラコニアン「キサンス様はお前たちのような小さきものと違い、凄まじく強いドラゴンで、我々の神のようなお方だ。」


廃都の黒竜


 この2戦で大分リソースを消費したので、今夜はラドのレオムンズ・セキュアー・シェルターの呪文で作成したコテージでリゾート気分で一泊です。
 ちなみにここで経験値の計算をし、レベルがあがり皆8レベルになりました。

 ちなみに戦利品メモ

宝石275stl相当×3、1つ
鋼貨1800stl
高品質のショートソード×6
ブレーザーオブアーマー×6


 翌朝、起きて朝一番にチャージの戻った青水晶の杖で、昨日癒しきれなかったメンバーの傷を癒します。このクリンの世界では〈大変動〉以後、まことの神々の力が失われており、癒し手がいないため、HPの回復はこの杖の能力だけが頼りなのです。しかも大人の都合で、杖の主のゴールドムーンとパートナーのリヴァーウィンドのNPCは戦闘に参加できません。

 ほぼ全快したところで、ザク・ツァロスに向けて冒険の再開です。本来ならば、そのまま進むとこのあたりのドラコニアンの勢力の拠点となっているドラゴンの神殿にぶち当たるところだったのですが、逃してやるかわりにドラコニアンから教えてもらったザク・ツァロスへの近道を進みます。
 暫く進むと崩れかけた花崗岩の脊柱がありました。そこには何か文字が書かれています。

トビン「なんだろ、魔法の言葉かな」
フリン「ドワーフ語じゃないの」
アングリフ「ラド、頼む。」
ラド「……、コンプリヘントランゲージをキャストします。」

 ラドがどんな言語でも読める呪文で調べたところ、失われたイシュタル語だということがわかりました。

大いなる都、ザク・ツァロス、美しき都市。
ここに、人々の寛大な行為、惜しみなき善行をあらわす。
我らの故郷に神の恩恵を。

 さらに進むと、中央に井戸がある開けた場所に出ました。奥には、ドーム型の寺院があり黄金の扉があります。

ゴールドムーン「私はあそこにいかなければならない気がするわ……。」
PL「彼女、ドコへいくの?」
DM「(質問には答えず、)さて、〈聞き耳〉してもらいましょう。」

バサ、バサ……。

 〈聞き耳〉判定に成功したトビンは何か大きな鳥のようなものが、井戸の中から出てこようとしていることに気がつきます。

トビン「ん?井戸から何かやってくる音が聞こえるんだけど……。」

 そのとき、井戸から黒くて巨大な影が飛び出てきました!そう、ここを守っている奴らの親玉、超大型のブラック・ドラゴン、その名キサンスです。



──というわけで戦闘ラウンド開始です。

 ドラゴンといったらドラゴンブレス、一箇所の固まっていては大変とトビンはすぐに散開しましたが、ドラゴンはその巨大で恐ろしい姿で、パーティに恐怖を与えようとします。
 ドラゴンの"畏怖すべき存在"の特殊能力。彼らを目にしたPCたちは意思セーヴを行い、失敗すると殆どのダイス判定にペナルティを受けたまま戦うことになるのです。

DM「ドラゴンは"畏怖すべき存在"の能力を行使しますね。難易度20ね。」

・トビン…種族がケンダーなので"恐怖"に対する完全耐性
・アングリフ…気合でセーヴに成功
・フリン…成功
・ラド…失敗、あれ?

 なんと!パーティの火力となるウィザードのラドがビビッってしまいました。
 まずはドラゴン、そのまま井戸から出て35フィート上空でダークネスの呪文を自分にかけて、自分の姿のまわりを薄暗くして見えにくくします。
 ラドは震える手でヘイストの呪文をパーティにキャストします。
 ドラゴンはそのままパーティの方に向かって上空から酸のブレスを吐き、効果線上にいたアングリフとフリンとNPCのリヴァーウィンドがまともに喰らってしまいます。
 30点の酸のダメージ。アングリフとフリンはなんとか耐えましたが、リヴァーウィンドは皮膚が焼けただれ、内臓が見え、おぞましい姿となってしまいました。



 しかし、ゴールドムーンは彼を気にもとめないで、黄金の扉の方へ吸い寄せられるように近づいていきます。

トビン「敵が空にいるんじゃ攻撃できないYO!」
フリン「ワシの弓もドラゴンの外皮にはじかれたわい」
ラド「飛行の呪文フライがあるけど、飛んでみる?」

いや、このドラゴンと空中でサシで戦うのは自殺行為でしょう……。

アングリフ「兎に角、ゴールドムーンを追いかけて、あの黄金の扉に一時撤退だ!」
トビン「了解!屋内に入ればなんとかなるかも。」

 というわけで、おぞましい姿になったリヴァーウィンドをアングリフが担ぎ、皆全力で黄金の扉の向こうに駆け出したところ……。何故かドラゴンは旋回し、井戸の中に戻りました。暫くまってみましたが、出てくる気配はありません。兎に角〈捜索〉も簡単にすませ、扉を開け、寺院に逃げ込みます。


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